tag:blogger.com,1999:blog-53508413511808258702024-02-20T01:27:19.084+09:00並行な混沌えあらんぐなサバイバルの日々@力武健次技術士事務所Kenji Rikitakehttp://www.blogger.com/profile/00837128766291897538noreply@blogger.comBlogger89125tag:blogger.com,1999:blog-5350841351180825870.post-29569347458765627342018-08-20T09:47:00.000+09:002019-02-21T13:30:33.250+09:00Keybaseのproofです==================================================================
https://keybase.io/jj1bdx
--------------------------------------------------------------------
I hereby claim:
* I am an admin of https://heikou-konton.blogspot.com
* I am jj1bdx (https://keybase.io/jj1bdx) on keybase.
* I have a public key ASDzBVChbICNAjHuZdRZp2kwSbrerCQEfsf4i1K7UmbEZQo
To do so, I am signing this object:
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And finally, I am proving ownership of this host by posting or
appending to this document.
View my publicly-auditable identity here: https://keybase.io/jj1bdx
==================================================================Kenji Rikitakehttp://www.blogger.com/profile/00837128766291897538noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-5350841351180825870.post-32863985470545374532018-07-29T12:50:00.000+09:002018-07-29T12:50:28.452+09:00Note始めています<p>
最近日本語の文章を<a href="https://note.mu/jj1bdx/">Noteの自分のページ</a>に書くようになった。このブログは残すが、今後はNoteの更新頻度が高くなると思う。
</p>Kenji Rikitakehttp://www.blogger.com/profile/00837128766291897538noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-5350841351180825870.post-33903155851997341372017-12-30T18:46:00.001+09:002017-12-30T18:46:38.665+09:002017年を振り返って<p>今年もあっという間に大晦日の前日になってしまった。</p>
<p>2017年はペパボ研究所での活動、そしてご支援いただくお客様の業務に多く時間を割くこととなり、結果として対外活動は減ったが、その分充実した仕事ができたように思う。経済的にも4期目にしてようやく軌道に乗りつつあり、安定した経済基盤の重要さを改めて実感する年となった。以下に公開できる活動の中で主なものを記す。</p>
<ul>
<li>Erlang/OTPとElixir関連では、3月にサンフランシスコのErlang and Elixir Factoryにて<a href="https://docs.jj1bdx.tokyo/writing-otp-modules/html/">Writing OTP Modules</a>と題したErlang/OTPのモジュールの書き方に関する発表を行った。そして直後の<a href="http://www.elixirconf.jp/">ElixirConf Japan 2017</a>で参加報告を行った。</li>
<li>2017年1月から<a href="https://rand.pepabo.com/">ペパボ研究所</a>の客員研究員として、研究開発に関する各種コンサルティングを行っている。<a href="https://research.matsumoto-r.jp/">主席研究員の松本亮介さん</a>他皆さんの活動を支えるのが主な役目だが、GMOペパボという会社の「速」「バーン感」に代表される身軽さと若い力強さにむしろ私の方が大いに力付けられた1年であった。</li>
<li>また今年はC++やC#、そしてVisual StudioといったWindowsの王道開発環境とガッツリ取り組んだ1年であった。人生初のオブジェクト指向言語での仕事であり、多くの若き先達に尻を叩かれながらなんとかやっている状況にふがいなさを感じつつも、52歳にして<strong>圧倒的成長</strong>をせざるを得ない(しなければプロとして信頼されない)環境に身を置けることは幸せなのだと思っている。</li>
<li>同時に今年はMoodleなどEラーニングの環境についても多くを学んだ年であった。もはやコンピュータを使った自習環境は誰でも作れて当たり前であり、業務に応用しない手はないことを実感した年でもあった。</li>
<li>疑似乱数関連では10月に<a href="https://speakerdeck.com/jj1bdx/jeita-20171026">それまでの研究成果をまとめた発表</a>を行う機会を得た。この分野は日進月歩で新しいアルゴリズムが提案されており、引き続き研究を進めていきたい。</li>
<li>FreeBSD関連では、Microsoft AzureでのPoudriere環境構築や、新しいPort<code>devel/czmq4</code>の開発を行った。引き続き<code>devel/git-lfs</code>と<code>japanese/dbskkd-sdb</code>のMaintainerの作業は継続して行っている。</li>
<li>2014年12月から運用している<a href="https://www.flightradar24.com">FlightRadar24</a>の受信局は2017年4月下旬に受信機の故障に伴うサービス停止が発生したものの、FlightRadar24の運営の皆さんの尽力で代替機に交換してからは順調に動いている。久々にRaspberry Piでの受信環境をセットアップする実験も行った。</li>
<li>自宅事務所はNTT西日本のフレッツ・光ネクストへの移行を行った。これですでに光ネクストを使用している東京拠点と併せ、ASAHIネットのIPv6サービス開始に伴い、IPv6 IPoEのネイティブ接続が可能となった。1996年にIPv6の最初の実験を始めてから実に21年かかったことになる。</li>
<li>10月からDuolingoでスウェーデン語の学習を始めた。毎日学習を続けることは容易ではなく、発音することも聞き取ることもおよそできているとは言い難いが、2018年は2016年同様にErlang/OTPやElixir関連でストックホルムへの旅行を計画しており、それに向けて地道に学習を続けている。</li>
</ul>
<p>2017年は米国第45代大統領とその側近達によるおよそ正常とはいえない失政の連続などにより、世界は大きく混乱した。そして日本も北朝鮮の脅威を看過できない状況であり、2018年はより不透明、不確実、そして不安定な世界情勢になっていくことは間違いないだろう。毎日、その日を暮らすことができ生き残れていることは奇跡であることをかみしめつつ、来年2018年も活動していこうと思う。まだまだ学ぶことは多いが、引き続きやっていく所存である。</p>
<p>以下、2017年と2018年の新年のあいさつの画像を付ける。2018年が少しでも2017年より良い年になりますように。</p>
<div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEiEY3WCiWu-9FaGCuSCUGfTDyu7LvFEnuz54vlYC75tZpeh5OUUX3pQVL6zOS8uHJ3z0knpDXM8ppbBv0ekTxEuVS8qsRbJwEAWXvHRlxsJVEQubd0ctXReQtDwdHmoVXJEhvhxlgEAmLM/s1600/krpeo-greeting-2017-small.jpg" imageanchor="1" style="clear: left; float: left; margin-bottom: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEiEY3WCiWu-9FaGCuSCUGfTDyu7LvFEnuz54vlYC75tZpeh5OUUX3pQVL6zOS8uHJ3z0knpDXM8ppbBv0ekTxEuVS8qsRbJwEAWXvHRlxsJVEQubd0ctXReQtDwdHmoVXJEhvhxlgEAmLM/s400/krpeo-greeting-2017-small.jpg" width="400" height="300" data-original-width="1024" data-original-height="768" /></a></div><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEjtkJK2u-W85kESCJDEF6vdovCSOLhuZ0ebAeRfhXGLqwjskixhvq78nRx3Kkaba12zoC5i4g3qdDwdQd0th1aD101j3jkJU2sb1isCVOuuFDlHSWXjtxYu9vrbfoEdLoRsvehMBOb8lfk/s1600/krpeo-greeting-2018-small.jpg" imageanchor="1" style="clear: left; float: left; margin-bottom: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEjtkJK2u-W85kESCJDEF6vdovCSOLhuZ0ebAeRfhXGLqwjskixhvq78nRx3Kkaba12zoC5i4g3qdDwdQd0th1aD101j3jkJU2sb1isCVOuuFDlHSWXjtxYu9vrbfoEdLoRsvehMBOb8lfk/s400/krpeo-greeting-2018-small.jpg" width="400" height="300" data-original-width="1024" data-original-height="768" /></a></div>Kenji Rikitakehttp://www.blogger.com/profile/00837128766291897538noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-5350841351180825870.post-54297333993256766202017-09-18T12:11:00.001+09:002017-09-18T12:12:06.861+09:00追悼 - 桜上水 進京亭<p>自分が一番親しんだラーメン屋といえば、間違いなく京王線桜上水駅北口にあった「進京亭」の名を挙げるだろう。父に1973年に連れていってもらったのが最初で、その後渡米期間を挟んで1975年から2016年までずっとお世話になった店である。他の店にはないラーメン、とりそば、ワンタンメン、味噌ラーメン、ギョーザ、ニラレバイタメ。全部逸品だった。しかも43年にわたって味がほとんど変わらなかった。最初は店主と妹さんでやっていて、そしてそれがすぐ店主と店主の奥様に代わって、その後娘さん、息子さんと店によく出入りしていたのを覚えている。なにしろ私が小学生の頃から中年になるまでずっと世話になっていた店だった。</p>
<p>2017年春より休業、そして2017年8月末に「忌中」の掲示が店に出ていたそうで、私も先日店の前で手を合わせてきた。どんな店だったかについては、<a href="https://ameblo.jp/hanzi/entry-12306110646.html">この記事</a>が参考になるだろう。</p>
<p>自分にとっては、1つの長い時代が終わった感は否めない。亡くなられた店主のご冥福をささやかながらお祈りする次第である。</p>Kenji Rikitakehttp://www.blogger.com/profile/00837128766291897538noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-5350841351180825870.post-30013242500759821562017-05-13T21:55:00.000+09:002017-05-13T21:55:45.807+09:00書評: 「Docker実践入門」<p>書誌情報: 中井悦司、「Docker実践入門」、技術評論社、2015, ISBN978-4-7741-7654-3</p>
<p>(本書は2015年9月に技術評論社Software Design編集部の池本様よりご恵贈いただきました。書評が大変遅れて申し訳ありません。)</p>
<p><a href="https://www.docker.com/">Docker</a>は今やLinuxのエンジニアなら誰でも知っているコンテナ技術を稼動させるためのプラットフォームである。この本は2015年9月に出版されたもので最新の情報は反映されてはいないが、それでも内容については今でも読むに耐えるものが多く含まれている。</p>
<p>私自身はLinuxとは現在に至るまであまり親密な関係ではなく、研究開発にはもっぱら<a href="https://www.freebsd.org/">FreeBSD</a>を使っている。コンテナといえばFreeBSDの<a href="https://www.freebsd.org/doc/handbook/jails.html">Jail</a>という(いささか物騒な)名前の技術の印象が強く、単なるコンテナという観点ではDockerにあまり新しさは感じていない。</p>
<p>しかし、Dockerの魅力は、コンテナの利用の仕方に対して一定の定義を与えたところにあるのだと思う。用途を限定した単一機能サービスを提供するコンテナを組み合わせるサービスモデルと、開発結果と動作環境を併わせてコンテナに封じこめ継続開発を可能にする開発モデルを明確に打ち出し、それらを複数統合して管理し運用する(オーケストレーションの)ためのサポートツールを整備することで、それまでのハイパーバイザベースだった仮想マシンの管理の手間を省いて大規模運用を行えるようにしたのが、Dockerが流行り普及しつつある理由ではないかと思っている。</p>
<p>本書でもDockerの基本的な考え方に最初の第1章を割いて詳細に説明している。大規模な開発運用テスト環境の維持管理、デプロイの効率化、そして 運用サーバー基盤を変えずにアプリケーションの更新をしたいという3つの要請に対して、Dockerがどんな技術をもってそれに応えているのかが詳説されている。この章だけでも読んでおく価値はあるだろう。(この章はDockerを運用する上で不可欠なGitについても概要を説明している。)本書の第2章以降は、実際にDockerでどのようにしてコンテナを生成し連携させて動かすのかについての具体的手法が示されている。</p>
<p>Dockerを取り巻く技術は常に変化しており、最近はLinuxだけでなくWindowsやmacOSでの動作や、<a href="https://mobyproject.org/">Moby project</a>という、よりOS間の可搬性を高めた動作環境の追求という方向へ向かっている(<a href="http://www.publickey1.jp/blog/17/dockermoby_projectdockercon_2017.html">Publickeyによる2017年4月の記事</a>)。書評が2年近く遅れた者がこういうことを書く 資格がないことを承知であえて書くなら、ぜひ本書をアップデートした第2版を読んでみたい。</p>
Kenji Rikitakehttp://www.blogger.com/profile/00837128766291897538noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-5350841351180825870.post-87073096772152943702017-02-26T17:03:00.000+09:002017-02-26T17:03:04.421+09:00一体私は何者か: 複数言語を扱う苦悩(2016年9月)<p>
以下は、昨年2016年の9月24日に書いた文章である。この月はスウェーデンのストックホルムに行き、月の後半には奈良で ACM Erlang Workshop 2016に参加したりしていた。ストックホルムの紀行文はいずれ書きたいと思うが、まずはこの雑文を記しておく。
</p>
<hr>
<p>
今月(注: 2016年9月)はとても忙しい月である。妻の白内障手術のフォローとか、東京拠点のメンテナンスとか、仕事の作業とか。しかもまだやるべきことが終わっていない。だから月末まで走り続けなければいけない。しかし、昨日JR奈良駅近くから近鉄奈良駅まで急いで7kgの荷物付きで歩いたりなど、奈良市内で5kmは歩いたので、右膝が死んだ。Erlang/Elixir界隈のスーパーな若者に「膝」を名乗る人がいるのだが、彼のことを思い出した。
</p>
<p>
今月は徹底的に人間的に「自分は何者か」を考えさせられた。基本的に日本語と英語の脳は別にできていて、別の人格が出てくるので(もちろん統合はしている)、両方をフル活動させないといけないときは、とても疲れる。具体的には、Erlangのことでストックホルムに行って発表した後、さる方の御自宅にて歓待していただいたときとか、昨日奈良に行ってErlang Workshopの後の宴会のアレンジで注文他の通訳者をやったとか(幸い日本通の米語母語話者が2名強力に説明してくれたので私は補助的役割で済んだのだけど)、そんな時はふだんの10倍ぐらい疲れる。
</p>
<p>
そして宴会が終わった後、「自分はいったい何だったんだろう、ひどい英語しゃべって、ひどい日本語しかできなくて、とんでもないよねえ」という徒労感にいつも襲われるのである。
</p>
<p>
帰国者として日本社会の構成員の大多数(特に出国経験のない人達)から非国民扱いされるのはもう慣れたし、そのことは普遍的であろう人権の理念に立てばまだ申し開きようもあるだろう。でも複数言語を同時に使うことによる苦痛、そしてさらにその先に自分自身であることを要求されることの苦難に耐え抜かなければならないことは、誰に申し立てようもなく、自分で背負うしかない。とても悲しい。年々酷くなっていく米語の滑舌と、悪くなっていく頭の反応速度。自分の理解が進んだせいで自分の欠点がわかるようになったということもあるが、加齢はきつい。いつ死んでもおかしくない。
</p>
<p>
そんな泣き言を言いつつも、仕事と生活は続く。終わらない。成果を出さねば。成果のための環境整備をせねば。そんな気分で最近はいつも寝ている。明日のことを考えなくて済む人達をうらやましく思いつつ。そんな人達はいないのかもしれないが。
</p>Kenji Rikitakehttp://www.blogger.com/profile/00837128766291897538noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-5350841351180825870.post-36935229276358335682017-01-27T21:14:00.001+09:002017-01-28T02:38:09.634+09:00好きなことをして生きていくこと<p>2017年1月から仕事で<a href="http://rand.pepabo.com/">ペパボ研究所</a>のお手伝いをしている。ペパボ研究所の研究リーダーである<a href="http://hb.matsumoto-r.jp/entry/2017/01/14/150449">松本亮介akaまつもとりーさんが「好きなことをして生きていくこと」</a>を淡々と熱く語っていた。そこで読みながら感じたのは<strong>「自分は本当にコンピュータが好きだったのだろうか?」</strong>という自分に対する問いであった。すこしその観点から書いてみようと思う。</p>
<h2>もちろんコンピュータは好きだったんだろう</h2>
<p>コンピュータが好きだったかと聞かれたら、それはもちろん好きだと答えるだろう。1973年の8歳の時、電電公社の電話計算の開発をしていた人にお世話になって、DEMOSのコンピュータまで触らせてもらったことがその後の自分の人生に大きな影響を与えたことは間違いはない。父がコンピュータを日常的に使っていた研究者だったのも当然影響していると思う。1974年に渡米中に<a href="http://cires.colorado.edu/">コロラド大学の環境科学共同研究センター</a>にあったCDC6600で最初にパンチカードでFORTRANのコードを実行したのもプラスにこそなれマイナスにはならなかったに違いない。当時は英語はロクに読めなかったけど、父の周囲の日本人研究者の人達が持っていたALGOLやAPLの本を読ませてもらった。「将来は絶対家にコンピュータが欲しい!」と思ったのもこの時だ。</p>
<p>1975年にテキサスインスツルメンツの74シリーズのTTLとモトローラの4000シリーズのCMOS、1976年にインテルの8008、そしてすぐに8080を知ってからは、アセンブリ言語が身近なものになった。そしてバスタイミングやファンアウトなどのデジタル回路の基本を勉強し始めた。実際に回路を作って実装できるようになったのは中学2年になった1979年以降だけど。家から秋葉原が通える位置にあったこと、そして1970年代はデジタル回路のデータシートを置いてあるような本屋が新宿にあったことなど、いろいろな好条件が重なったことが影響したのは間違いないと思う。あとは周囲の人達の影響だろうか。そのころからの付き合いが今もFacebookやTwitterで続いていたりする。</p>
<p>1979年にApple ][の実機を入手できたことは、それ以降の世界を大きく広げた。1980年代に入ると、自分で簡単なコンパイラを書いてそれがそこそこ売れたりしたこともあって(GAME-APPLEコンパイラ、ASCII誌1980年4月号)、コンパイラやインタプリタの製作技法に興味を持つようになる。すでに他界された中西正和先生の「LISP入門」という本を読んでLISPにも興味を持ったりした。タイマー駆動でPSGを演奏したり、いろいろなことをやったと思う。</p>
<h2>でもコンピュータでは一番になれなかった</h2>
<p>ただ、世の中はそう順風満帆に行くものではない。高校2年生の1982年に網膜剥離と白内障で事実上右眼の視力が使いものにならなくなってからは、目に過度に負荷をかけるコンピュータをやる気にはなれなかったのと、大学受験に集中する必要もあって、1985年までコンピュータをほとんど触らない時間を過ごすことになる。その間に流行ったのは、ゲーム作りやフロッピーディスクのプロテクト外し、そしてコンピュータグラフィックス(CG)であった。これらの流行りに乗れなかったことは、現在まで後に尾を引いているように思う。今もCGは苦手だったりする。</p>
<p>そして1985年のNTT民営化に伴う電話回線開放以降は、多数の「すごい人」達に出会って、プライドを粉々にされる日々が続いた。たぶん純粋に好きだからではなく、<strong>人を見返すためだけに行動するという動機が加わった</strong>のはこの頃からだろうと思う。パソコン通信は世界を変えるだろうと思い、その周辺の通信技術も随分勉強した。アスキーネットや日経mixといった各種BBS、そしてJUNET、UUCPやSMTP、NNTPといったWebより前のメッセージ交換の技術学習と研究に没頭したように思う。「フリーソフトウェア」という概念を学んだのもこの頃だった。</p>
<p>でもこのころ「コンピュータが好きだったか」と聞かれると、残念ながらそうではなかったように思う。コンピュータのプログラミング言語や各種メモリ管理の技術は大事だし、当時流行ったC言語は仕様からすべて覚えて実際に使っていたけれど、<strong>機械の中だけで完結する世界を立派にしたところでどれほどの意味があるのか</strong>という問いへの答は出ていなかったように思う。だから大学院の修士課程では、今なら花形であろう関数型言語の研究をやっていた研究室に進学したにもかかわらず、ロクに大学に行かずに劣等感のカタマリになっていたことを覚えている。ちょうど1990年前後のバブル絶頂期でもあり、周囲が派手にカネを使って遊んでいる中で、自分は英語の勉強とかコンピュータの勉強とかで人間関係に苦労していて、新卒でOS開発の仕事をしていたころもTCP/IPの実験が十分にできないというジレンマに苦しんでいたこともあって、とても人生は辛かった。</p>
<h2>そして他のことでも一番にはなれなかった</h2>
<p>1992年に結婚と同時に大阪に移住してからは、インターネットの関連技術の研究開発の仕事をずっとしている。もちろんインターネットはコンピュータの技術なのだけど、それでコンピュータが好きになったかどうかと言われるとこれもかなり疑わしい。OSひとつを取ってみても、主流の製品を選ばなかったことは後々まで影響している。自分は4.3BSDからSunOS 4.1.xを経てBSD/OS、FreeBSDへと進んでいったのだけど、周囲はWindows95だったりLinuxだったりという状況を経て、いまや世の中はLinuxだらけになってしまった。</p>
<p>どんなに良いものでも、独占的状況を占めると、悪いところが目につくようになる。バージョン9以前のMacOS(OS XやmacOSでは<strong>ない</strong>)のろくでもないメモリ管理、Windows XP以前の脆弱性、そしていまだにまともなデスクトップが作れずGNUismにまみれているLinux(そして今使っているFreeBSDもデスクトップが貧弱なことは同じだ)など、常時利用するには好きになれないソフトウェアが増えた。Webブラウザだってそうだ。背景が白になっているというだけで目の悪い者には大きな負担になるし、必要のないソフトウェアが集まってbloatwareになっている。インターネットもIPv6に移る移ると言いながら未だに日本ではIPv6の普及率は低い。</p>
<p><strong>でもソフトウェアなりコンピュータがコモディティになって一般化する上で大事なのは、性能よりも広告とマーケティング、そして中身よりも見かけ、本質よりも利便性なのだということを2000年代に自分は学んだように思う。</strong>このことが絶対的な悪だとは思わないが、善だと言い切れるほどの自信は自分にはない。良くて「必要悪」がせいぜいだろう。</p>
<p>そしてマーケティングと広告だけを重視したツケは、基盤部分に回ってきて大きな技術的負債、あるいはもっといえば技術的賠償責任(technical liability)になってきている。世の中全体のvolatilityも上がり、ずいぶん不安定になってしまった。Twitterの過激な発言と炎上を繰り返して政治的権力を握るなんていう軍事プロパガンダと変わらない手法が一般的になってしまった。<strong>こんなことになってしまったコンピュータとインターネットをいまさら好きになれるのだろうかという疑問はこのころから今も残っている。</strong></p>
<p>そして自分は2000年から2013年までの間は、研究者としてなんとかのし上がることに懸命だった。スタートが遅れた分、いくつかのプロジェクトを渡り歩き、<a href="https://heikou-konton.blogspot.jp/2013/01/ku-resignation.html">自分には向かない長距離通勤を課せられる教授のポジションをあえて勤めて身体も精神も壊し</a>、自分の望んでいない<a href="https://heikou-konton.blogspot.jp/2014/04/shokuan.html">失職と雇用保険受給という厳しい経験</a>もした。日本の組織は、しょせんプロパーでない者、そしてリモートワークの人間には冷たいということを、改めて身をもって学んだ。</p>
<p>わざわざならなくてもいい研究者になったのは、2002年に大病をして、もうその時点でやれることをやるしかないという諦めがついたからだが、結局のところそれは、<strong>博士でなかったことで侮辱されたこと</strong>、そして<strong>親父が教授だったのに自分は教授にすらなれていなかったこと</strong>という劣等感がなさしめただけなのかもしれないと今は思っている。なにしろ世の中には<a href="https://www.media.mit.edu/news/spotlights/2016/06/joi-ito-appointed-professor-practice-media-arts-and-sciences">大学を出ていなくても研究所の所長や教授になってしまう人もいたりするので</a>(もちろん当事者が有能かつ優秀でなければこんな人事はあり得ない)、そういう勝負をすること自身無駄だったのかもしれない。ずいぶんな回り道をしたものだと苦笑している。</p>
<h2>一番になれなくてもやれることをやるしかない</h2>
<p>失職と共に<strong>人生肩書も名誉も何もなくなってしまった</strong>状態で、なにをして生きていくか。まずはとりあえず仕事をもらうために周囲の人達にお願いして回った。ありがたいことにお客様として支援してくださる方々がいるおかげで、仕事をしてなんとか食えている、現在の私がある。このときお客様になってくださった方々からいただいた話は、当然ではあるのだが、過去の自分の仕事と業務実績に基づくものであった。具体的には、自分が<strong>人生の早い時期で好きになったコンピュータに関する仕事であった</strong>。</p>
<p>残念ながらコンピュータ屋としては自分は一番になれなかった。そしてもちろんその他のことでも一番にはなれなかった。ただ、一番になれなかったからといって、自分が生涯やっていく仕事としてコンピュータ技術を使えなくなったわけではない。幸い、コンピュータの仕事をすることは今でもそれほど苦痛には感じない。仕事としてだけではなく生活の一部としてなじんでいるレベルにまでコンピュータ技術の身体性を維持できていることは幸運としかいいようがない。それは結局のところ<strong>「好きなことをして生きていく」ことを実行している</strong>のだろう、ということは思っている。</p>
<h2>最後に「好きなことをして生きていくこと」が残った</h2>
<p>コンピュータの世界は変化が激しい面と、そうでない面がある。自分が好きなのは、変化の激しい分野ではなく、表面的に変化の激しい分野から、変わらず進んでいく技術要素を時間をかけて追いかけていくことなのだと思っている。<a href="https://speakerdeck.com/naoya/system-of-record-to-system-of-engagement">伊藤直也氏のまとめたプレゼン資料</a>にあるSystem of RecordとSystem of Engagementのどちらに自分が興味があるかといえば、System of Recordの方だと思っている。社会基盤を維持する技術の方が、人間相手に機械を使ってもらう技術よりも自分には向いていそうな気がする。</p>
<p>多くの人達が集まり、新しいアイディアが実装され実行されていく分野は、変化が激しい。そして競争も激しい。Webのフロントエンドがそのいい例だろう。System of Engagementに関する技術は、日々変化している。Makerムーブメント、スマートフォンの台頭、IoTのバズワード化。こういう変化に富んだ技術と触れているのは楽しいし、人間の使い方がこのような技術の発展に伴い変わっていく以上、技術者としても付いていかなければならない。</p>
<p>一方、本当に仕事としての価値が発揮されるものは、System of Recordの分野に属するものだと思っている。安定しているものが不安定になればすぐに社会に混乱が起きる。それほど今の社会は脆弱である。現実には、プログラミングもHTMLのテンプレート作りもいまだにエディタを使ってやっているし、OSだってUNIXから飛躍的な変化があったわけではない。そういう意味では爛熟した技術をいかに粛々と適用していくか、ということをやってきたからこそ、自分の今の生活が維持できているのだと思っている。この一見当たり前のように見えることが、実はビジネスになるのかもしれない、ということを最近は実感している。</p>
<p><a href="https://www.wantedly.com/companies/ikyu/post_articles/42802">前述のプレゼンの後日談として伊藤直也氏の記事</a>が出ているが、そこに述べられているように、System of RecordとSystem of Engagementは、対立軸ではあっても、排他的概念ではない。両方の長所を掛け合わせるようにして仕事を動かしていくのが、おそらくコンピュータ屋、そしてソフトウェア屋として為すべきことなのだろうと思っている。そこに自分が研究者としてやってきた経験と、そこで学んだ学術的手法を活かせれば、おそらく「好きなことをして生きていく」実感を得ながら、仕事のサービスを通じてお客様に価値を還元していけるのだろう、と最近は感じている。もちろんそのためには、日々勉強に励まなければならないし、生活や事業の雑事も回さなければならない。家族はもちろん大事だ。楽なことはひとつもない。<a href="https://heikou-konton.blogspot.jp/2001/03/blog-post.html">自分は情報技術者たり得ているだろうか。</a>まったく自信はない。日々失敗ばかりだ。</p>
<p>でも、それこそが「好きなことをして生きていくこと」なのではないだろうか。</p>
<p>最近はそう思えるくらいに、自分の精神状態は回復していることを実感している。</p>Kenji Rikitakehttp://www.blogger.com/profile/00837128766291897538noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-5350841351180825870.post-42527067492763637792016-12-30T15:19:00.001+09:002016-12-30T15:19:20.513+09:002016年を振り返って<p>気がつけばもう大晦日の前日である。</p>
<p>2016年は物理乱数ハードウェアやその他IoT関連の実験、温故知新的なオブジェクト指向技術の学習、そして2度のErlang/OTP関連の出張など、過去2年よりもさらに自分の持ち駒を増やさないといけない年だったように思う。いろいろ厳しい時期もあったが、なんとかお客様のおかげで乗りきることができた。以下に公開できる活動の中で主なものを記す。</p>
<ul>
<li>Erlang/OTP関連では、3月にサンフランシスコのErlang FactoryにてArduino UNOとErlang/OTPを接続するための技術に関する発表を行い、9月にはストックホルムのErlang User Conferenceで、Erlang/OTPでの各種疑似乱数の利用に関する総括的な技術の発表を行った。年内にはOTPにrandモジュールにjump functionをmasterブランチにマージすることができた。来年のOTP 20で公式にリリースされる予定である。</li>
<li>5月にはQNAPのNASを導入した。これでバックアップ用のリソースを一元管理することができるようになり、業務での信頼性を上げることができたように思う。</li>
<li>8月のMaker Faire Tokyo 2016では「科学技術教育フォーラム」の一展示として、物理乱数を使ったサイコロであるavrdiceの展示を行った。来訪者の方々から質問をたくさんいただくことができ、乱数技術、あるいはランダムネスに対する社会的関心は一定レベル存在することを確認できたのは収穫だった。</li>
<li>物理乱数モジュールavrhwrngと新部裕さんのNeuGの追試は昨年から継続して行っている。これに関連して、技術評論社の雑誌Software Designに物理乱数と疑似乱数に関する連載を同誌2016年8月号から10月号まで3回執筆した。また、2016年12月号には、データベースの基礎技術であるハッシュとドキュメント指向データベースの解説記事を執筆した。</li>
<li>FreeBSD関連では、devel/git-lfsとjapanese/dbskkd-cdbのPort maintainerを引き継ぐことになった。これに伴い、Poudriereによるテスト環境を整備した。</li>
<li>12月にはQiitaにてC言語、FreeBSD、そしてErlangのアドベントカレンダーを開設し、自らもElixirのカレンダーを含め23件の記事を執筆した。</li>
<li>2014年12月から運用している<a href="http://www.flightradar24.com/">FlightRadar24.com</a>の受信局は、NTT西日本からの回線更新に伴う停止やその他の一時的な回線障害による事故はあったものの、引き続き順調に動作している。2016年11月からはさらにアンテナの高さを上げてカバー範囲を広げ、KIX/ITM/UKB各空港周辺の情報提供の精度を上げることができている。</li>
</ul>
<p>一方、引き続き生活の中で不要なものをどのようにして止めるかという見直しは絶えず行っている。これも列挙してみよう。</p>
<ul>
<li>アマチュア無線の活動は事実上停止している。</li>
<li>8月のMaker Faire Tokyo 2016で痛感したのは、展示会の出展側に回ることの疲労である。今後、仕事としての依頼でない限り、展示会の出展側に回ることは、特に6月から9月までの暑い時期には原則行わないことにしようと考えている。</li>
<li>オープンソース関連の活動については、旗振り役はもう若い世代に任せるべきではないかというのが率直な実感である。私のような<del>オッサン</del>年長者は表舞台から積極的に降りるべきだろう。よって<a href="http://qiita.com/jj1bdx/items/a9cd77807e0d689fb4b6">Qiitaのアドベントカレンダーを主催するのは今年を最後とする旨宣言した。</a></li>
<li>生活は引き続き大変厳しい。事業開始3年目であり、業務の展望について抜本的な見直しを行う時期に来ている。そして業務に直接つながらない出費については引き続き緊縮財政に努めている。</li>
</ul>
<p>2016年は多くの災害や手段を問わない各種紛争に明け暮れた年であった。2017年は世界情勢の大転換は不可避であり、どのようになるか先はまったく見えない。今日まで生き残れていることは奇跡であり、日々の生活と業務を送れることはとても幸運なことなのだろうと思って来年2017年も活動していこうと思う。</p>Kenji Rikitakehttp://www.blogger.com/profile/00837128766291897538noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-5350841351180825870.post-48432895685377281832016-10-19T13:28:00.000+09:002016-10-19T13:28:29.989+09:00お客様事例紹介: 横浜開港資料館 画像検索システム 開発と改修(2014/2015年度)<p>力武健次技術士事務所では、2014年度、2015年度の2年度にわたり、<a href="http://www.kaikou.city.yokohama.jp/index.htm">横浜開港資料館様</a>の閲覧室にある画像検索システムの開発と改修作業を、<a href="http://www.next.co.jp/">有限会社ネクスト・ファウンデーション様</a>のご依頼により実施致しました。詳細は横浜開港資料館様の<a href="http://www.kaikou.city.yokohama.jp/news/etsuran.html">えつらん室News</a>(2015年5月9日の記事)にて、ご紹介いただいております。</p>
<p>この開発と改修作業にあたり、技術的に留意した点は以下の通りです。</p>
<ul>
<li>HTML5+CSS3+各種JavaScriptツールを使いWebサイトとしてシステムを全面的に書き換えることにより、各種ブラウザに対する互換性の提供と、将来にわたってコンテンツの可用性を維持することが可能になりました。</li>
<li>静的サイト生成を行うことで、現在の利用形態だけでなく、他の利用形態でも使えるように設計をしています。</li>
<li>UIの設計にあたっては、できるだけ簡素で、かつ利便性の高いものであることを目指しました。</li>
</ul>
<p>横浜開港資料館様は横浜市中区のみなとみらい線日本大通り駅に位置する歴史的にも由緒ある建物で、横浜のみならず日本の歴史を知る上で貴重な資料を多数展示されています。<a href="http://www.kaikou.city.yokohama.jp/document/index.html">閲覧室の画像検索システムはどなたでも利用できます。</a>ぜひ一度ごらんになっていただければ幸いです。</p>
<p>力武健次技術士事務所では、お客様からのWebサイト制作のご依頼にあたっては、今後も可能な限りシンプルなWebサイトの提供を目指していきます。</p>
<p>なお、本記事に記した実績の公表にあたり、ご快諾いただいた横浜開港資料館様と有限会社ネクスト・ファウンデーション様に深く感謝申し上げます。</p>Kenji Rikitakehttp://www.blogger.com/profile/00837128766291897538noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-5350841351180825870.post-13504233336798578422016-10-09T14:42:00.001+09:002016-10-09T14:53:15.412+09:00書評: 「ITエンジニアのための機械学習理論入門」<p>書誌情報: 中井悦司、「ITエンジニアのための機械学習理論入門」、技術評論社、2015, ISBN978-4-7741-7698-7</p>
<p>(本書は2015年10月に技術評論社Software Design編集部の池本様よりご恵贈いただきました。書評が大変遅れて申し訳ありません。)</p>
<p>現在「機械学習」と称されるニューラルネットワークの技術は、私が過去25年以上にわたって遠ざけてきた苦手なものの1つである。大量のパーセプトロンの組み合わせで特性情報が得られるという「夢のような話」に納得することは、「コンピュータというのはアルゴリズムで説明し得る作業のみが行えるもの」という定義で生きてきた私自身の考え方では極めて困難である。2016年現在得られているニューラルネットワークの成果全般に反駁するつもりはもちろんないし、その有用性を否定するものではないが、単にニューラルネットワークの説明を受けただけでは残念ながら私の疑問は消えない。申し訳ないがこの疑問は死ぬまで消えないだろう。(法的にもこの「なんで?」という問題は存在しており、<a href="http://takenokorsi.hatenablog.com/entry/2015/03/23/000020">「判断過程の不透明性に関わる問題」</a>として現在も議論が続いている。)</p>
<p>本書はこの「なんで?」という部分に、統計学の観点から光を当てて解説しようとしたものであり、どういう計算手法を使えば結果がより目的にかなったものに近づくかの判断例が記されている。具体的には以下の流れで示されている。</p>
<ul>
<li>最小二乗法の推定から複数のデータセットを使ったクロスバリデーションとオーバーフィッティングの問題の説明</li>
<li>尤度関数による確率モデル(最尤推定法)の導入</li>
<li>勾配降下法による多次元ベクトルへの適用(概念としてのパーセプトロンの導入)</li>
<li>ロジスティック関数と偽陽性率の関連</li>
<li>教師なし学習におけるk平均法とEMアルゴリズム(期待値最大化法)</li>
<li>ベイズ推定の適用と最尤推定法との比較</li>
</ul>
<p>これらの手法は、ニューラルネットワークが「なぜそうなるか」を説明するものではない。しかし、どのように使えばより統計学的に筋の通った結果を得られるかについての手法としては一貫しており、ニューラルネットワークを「どうやって使えばマトモな結果が出るのか」についての実践的な説明になっている。アルゴリズムからの演繹的説明が不可能な以上、このような「結果が統計的にこうなるのでアルゴリズムはこう使うべき」という説明が、現時点では最も有用であると思う。その意味で本書は(統計も大の苦手である私のような者を含め)ニューラルネットワークの結果を評価する上の第一歩を知りたい人には大いに役立つであろう。そして本書は基礎理論の解説書であり、大学での教科書に使えるだけの中身のある力作である。</p>
<p>なお、本書にはサンプルコードが用意されているが、書籍の中ではサンプルコードがどのような概念を示しているか、そしてその動作結果が何を意味するかの説明に徹しており、サンプルコードの表面的な解説がなされているわけではない。言い換えれば、プログラマとしての知識は要求されず、数学の基本的知識があれば読めるようになっている。その意味でプログラミングの苦手な人にもおすすめできる。</p>Kenji Rikitakehttp://www.blogger.com/profile/00837128766291897538noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-5350841351180825870.post-76735932149066392022016-10-09T12:34:00.001+09:002016-10-09T12:34:50.301+09:00書評: 「ニッポンの個人情報」<p>書誌情報: 鈴木正朝、高木浩光、山本一郎、「ニッポンの個人情報」、翔泳社、2015、ISBN 978-4-7981-3976-0</p>
<p>(本書は2015年2月に翔泳社の井浦様よりご恵贈いただきました。書評が大変遅れて申し訳ありません。)</p>
<p>鈴木正朝、高木浩光、山本一郎。</p>
<p>この3人の名前のうち、一人でも見て恐怖を感じないようであれば、日本のプライバシー問題、特に個人情報の扱いが実務者にとってどれほど難しいかについての、理解が不十分と思ったほうがいい。正直いってこの御三方のうち一人と対峙しなければならなくなったら、シッポを巻いて逃げたい。その3人がまとめて<strong>鼎談</strong>しているこの本は、正直いって重い。重すぎる。怖くて読めない。「ニッポンの個人情報」とか、「プライバシーフリーク」とか、そんな軽そうな言葉に騙されてはいけない。</p>
<p>しかし、現状の混沌と矛盾、法律の手抜き、そしてそもそもの「プライバシー権」への認識がバラバラになっている現状を知るには、この本に書かれている内容ぐらいは知っておかなくてはならないだろう。その意味では対談形式で重要な論点が各所にタップリと含まれているこの本は貴重な存在といえる。重要なポイントは全部QRコードでURLへのアクセスがしやすくなっているのも良い。</p>
<p>この書籍の発刊後、<a href="http://www.ppc.go.jp/personal/preparation/">個人情報保護法は改正され、「平成27年9月9日から2年以内に全面施行」される予定である(日本政府の個人情報保護委員会のページより)</a>。この法律改正により、「個人情報」を仕事に使うすべての事業者(個人も例外ではない)がこの法律の適用対象となる。そういう意味では、<strong>もう誰も逃げられなくなっている</strong>のである。今までの経緯と問題点をふまえた基本をおさえる上では、必読であろう。</p>Kenji Rikitakehttp://www.blogger.com/profile/00837128766291897538noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-5350841351180825870.post-30172768802767718652016-09-19T18:54:00.001+09:002016-10-19T13:02:31.418+09:00Erlang User Conference 2016にて発表致しました<p>スウェーデン王国ストックホルムにて開催された<a href="http://www.erlang-factory.com/euc2016/">Erlang User Conferece 2016</a>にて,力武健次技術士事務所 所長 力武健次が<a href="http://www.erlang-factory.com/euc2016/kenji-rikitake">“Fifteen Ways to Leave Your Random Module”</a>と題して英語にて発表致しました.スライドは<a href="https://speakerdeck.com/jj1bdx/fifteen-ways-to-leave-your-random-module">speakerdeck.com</a>にて公開しています.また、この発表で使用したスライド原稿などは<a href="https://github.com/jj1bdx/euc2016-erlang-prng/">GitHubのレポジトリ</a>にて公開しております。</p>
<p>なお、Erlang User Conference 2016 での発表の模様は、<a href="https://www.youtube.com/watch?v=RTvVw_UToI4">こちらのYouTubeのビデオ</a>にてごらんいただけます。</p>Kenji Rikitakehttp://www.blogger.com/profile/00837128766291897538noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-5350841351180825870.post-91657466984499018252016-08-22T16:25:00.001+09:002016-08-22T16:26:41.540+09:00大電力ラジオ放送の終焉<p>新年早々どうやって東京の拠点にて直接波のラジオ放送を受信するかということについて考えていたが、結局結論としては「何もアンテナを建てずに済ませる」のが一番良さそうだという話に落ちついてしまった。</p>
<p>その昔今は亡き関根慶太郎先生の最後のご著書であろうと思われる「無線通信の基礎知識」(ISBN-13: 9784789813464)にて予想されていたのが、「大電力大規模アンテナの無線通信は廃れ、小電力と小規模な到達範囲の無線局を多数置局する方向へ世の中が向かう」ということだったと記憶している。これを読んだ数年前はあまりその実感はなかったのだが、最近の世の中の情勢を見るに、もう大電力ラジオ放送は、少なくとも日本の都会では機能しなくなりつつあるのではないかという結論に至った。(この記事での話はいずれテレビ放送にも適用できると思うが、必要帯域や電力レベルを考えると、テレビでは技術的制約はずっと厳しくなるだろうと予想できる。)</p>
<p>以下に理由を箇条書きで書いておく。</p>
<ul>
<li>ラジオ受信機とスマートフォンとの間の価格差は縮小している。家庭内にWiFi+定額インターネット回線が整備されつつあることを考えると、スマートフォンでインターネットラジオを聞くこととラジオ受信機で直接ラジオを聞くこととの差は縮小しつつある。</li>
<li>移動中であっても、日本では3G/LTEの回線が整備されている地域であれば、ユニキャストのインターネットラジオでも基地局間のハンドオーバーが機能している限り中断はまずない。東京や大阪の地下鉄の中の状況を考えれば、むしろラジオ直接放送よりもアクセス範囲は広いくらいである。</li>
<li>中波放送を電波で聞くのは、家屋内あるいは屋外の雑音(インバータやスイッチング電源の普遍的使用、特に最近は太陽光発電、LED電灯などの大電力パワーデバイスによる使用)を考えるに、ますます困難になりつつある。非常時あるいは停電時を除けば、その機能はインターネットラジオ(日本ではNHKのらじる☆らじると民放のRadiko)で十分補完されつつある。</li>
<li>FM放送を電波で聞くのは中波放送に比べればずっとノイズ耐性は高いが、これについても非常時あるいは停電時を除けば、その機能はCATVのFM放送中継、あるいはインターネットラジオで十分補完されつつある。(オーディオマニアの直接波受信指向については例外的な趣味として判断すべきであろう。)</li>
</ul>
<p>平時の大電力ラジオ放送は以下の技術で置換されるだろう。</ul>
<ul>
<li>インターネットラジオ</li>
<li>CATVによるFM放送中継(あるいは地デジのデータ放送を使ったAMラジオの中継)</li>
<li>3G/LTEあるいはそれ以降の携帯電話網</li>
</ul>
<p>パラダイムシフトがあるとすれば、「大規模かつ広範囲なカバー範囲を提供する独立した無線局」から「小規模かつ小電力な狹いカバー範囲を提供する無線局が多数ネットワーク接続された複合体」への移行であろう。この環境では「マルチキャストあるいはブロードキャスト」とユニキャストのコストの違いはあまり意識されない(技術的にどのような負荷がかかるかとは独立した問題である)。この移行はまだ完了していないとはいえ、すでに起こっており進んでいることと予想できる。
このような移行によって失われるものがあるとしたら、それは以下の一点に要約されるであろう。</p>
<ul>
<li>単なる受信機では放送は受信できなくなったため、各端末に必要なエネルギー量が大きく増えている。携帯網あるいは無線LANに接続される端末は本質的に送受信機である。</li>
</ul>
<p>この状況下で、大規模ラジオ放送の役割とは何なのか、今一度考えてみる必要があると思う。</p>
<p>(初出: Facebookの自分のタイムラインより 2016年1月3日)
Kenji Rikitakehttp://www.blogger.com/profile/00837128766291897538noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-5350841351180825870.post-61593182102071074412016-08-18T23:09:00.001+09:002016-08-19T13:25:00.436+09:00祝「プログラミングElixir」刊行<div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEiIFFpHv-hQZtpDq7cVC4MDuurInKlosgL1b55CvrojzScPBNqg8NxlEXMh8kYtdtZQ3Z7j6urBHP9DzQ0B0P8KZiJiBbyj2KW5JcRdcuIlMgBUnO0DChLPF4DgXZ_le9dQ6b1xKHquY5w/s1600/programming-elixir-ja-cover.png" imageanchor="1" style="clear: left; float: left; margin-bottom: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEiIFFpHv-hQZtpDq7cVC4MDuurInKlosgL1b55CvrojzScPBNqg8NxlEXMh8kYtdtZQ3Z7j6urBHP9DzQ0B0P8KZiJiBbyj2KW5JcRdcuIlMgBUnO0DChLPF4DgXZ_le9dQ6b1xKHquY5w/s400/programming-elixir-ja-cover.png" width="282" height="400" /></a></div>
<p>
このたび,<a href="https://pragprog.com/book/elixir12/programming-elixir-1-2">Programming Elixir 1.2</a>の日本語版がオーム社より<a href="http://shop.ohmsha.co.jp/shopdetail/000000004675/">「プログラミングElixir」</a>として刊行される。この本は2nd editionであり、すでに3rd editionである<a href="https://pragprog.com/book/elixir13/programming-elixir-1-3">Programming Elixir 1.3</a>のプロジェクトが進行中だが、それでも日本語で初の本格的なElixir並行プログラミングシステムの書籍が出版されるのは大変喜ばしいことである。著者のDave Thomas、翻訳者の笹田さんと鳥井さん、編集者の方々、レビュアーの方々、そしてその他関係者の方々の努力に深く敬意を表したい。私もErlang/OTPに関わってきた者として、微力ながらレビュアーとして参加することができた。
</p>
<p>
以下は、「プログラミングElixir」発刊にあたっての、個人的なポエムである。
</p>
<p>
この本の「推薦のことば」にも書いたのだが、Dave ThomasがErlang Factory SF Bay 2014に現れたとき、「なんでRubyの人がErlangに関係あるのか」が、正直いってよくわからなかったのは当時の率直な実感だった。<a href="http://www.erlang-factory.com/static/upload/media/1404379022862808josevalimdavethomassf2014.pdf">この時の彼とJosé Valimが共同して行ったプレゼンテーション</a>は、"Catalyze Change"、つまり「変化を触媒となって加速しよう」というものだった。内容は、Erlangを読み慣れていない入門者にとって、Erlangのエコシステム全体がいかにわかりにくいかというのを徹底して糺弾するという、Erlang/OTPのファンにとってはかなり耳の痛い内容で、現場の空気は少なからず殺伐とした感じになったことを覚えている。そこでは、Erlangの文法のわかりにくさ、レコードの使いにくさ、マニュアルの読みにくさが強調された。これらの傾向は2016年の今でも直ったとはいえないだろう。Erlangのいわばドス黒い部分である。もちろんこの悪条件を越えている人達はいっぱいいるし、私もそれほどは気にならないが、多くのErlangを勉強しようとした人達を敬遠させる原因になったことは否定できないだろう。そういう意味でDave Thomasがやったのは、かなりキツいプレゼンだった。「Erlang/OTPにはこんなに未来があるのに、なんでこんな状況を放っておくんだ」というDave Thomasの不満は相当なものだったと思う。
</p>
<p>
しかし、Dave Thomasはそこで終わるような人ではなかった。なにしろThe Pragmatic Programmerという本を書き、Pragmatic Bookshelfを作った人である。彼はErlang/OTPに持っていた不満について、おそらくElixirに救いを見出したのだと私は思っている。そして彼はElixirを普及させる本を自分で書いてしまった。それがProgramming Elixirという本だった。かつてRubyに対して熱心だったDave Thomasは、今度はその情熱をElixirに向けたのだと私は思っている。残念ながらRubyに関する本は私はほとんど読めていないのだが、Pragmatic Bookshelfのラインアップを見ても、そのことは証明されているだろうと思う。なにしろ<a href="https://pragprog.com/book/cmelixir/metaprogramming-elixir">Metaprogramming Elixir</a>なんていう、Elixirのマクロを知らないと読めないような本、そしてPhoenixフレームワークの<a href="https://pragprog.com/book/phoenix/programming-phoenix">Programming Phoenix</a>という解説書まで出版させているのだから。こんなElixirに対してマニアックな人が他にいるだろうか?
</p>
<p>
Elixirが有名になってきた過程で、Erlang/OTPの側にいた人達は、かなり当惑していたように思う。ElixirにはErlang/OTPにない要素がたくさん詰まっている。そういう意味で私はまだElixirはほとんど使えていない。たぶん死ぬまで使えるようにはならないだろう。それくらいElixirは奥が深い。Erlang/OTPも2008年からつき合っているが、おそらく死ぬまでまともに使えるようにはならないだろう。どちらも奥が深すぎる。並行プログラミングシステムは、人類にはまだ早いのかもしれない。そんなことを思いながら、少ない時間の中で何度も実験を繰り返し、失敗し続けているのが現状だ。でもErlang/OTP単独ではできないことがElixirでできる。そのことは確かだ。だからElixirを支持しようと思った。その判断は間違っていなかったと思う。なにしろElixir、Erlang、どちらのコミュニティも小さすぎる。仲違いしている余裕なんかない。誰がErlang/OTPを維持し続けるのかということを考えたら、ElixirをきっかけにErlang VMを使うようになった人達を、仲間として歓迎こそすれ、絶対に敵にしてはいけない。今のところ、そういう判断でコミュニティは上手く回っているように私は思っている。共存共栄である。幸い、Erlang/OTPのプログラマの多くは、自分達のツールをElixirにも対応させている。
</p>
<p>
残念ながら未だにDave Thomas本人と個人的に話をしたことはない。しかし、Elixirを引っ張ってきた設計者でありErlang/OTPの辣腕プログラマでもあるJosé Valim、Phoenixフレームワークの作者Chris McCord、hex.pmパッケージマネージャの作者Eric Meadows-Jönsson、今はErlang/Elixirから離れているように見えるがビルドツールkerlを作りElixirの初期の普及に尽力したYurii Rashkovskii(この4人は皆若い!)、そして私同様のオッサンではあるがElixirの普及に力を注いできたBruce Tateなど、多くの強者達と話をし、彼等の作品に触れた経験で考える限り、ElixirはErlangが作ってきたエコシステムの可能性を大きく広げたことは間違いないと私は確信している。そのことをずっと前から見抜いていたDave Thomasについては、さすがとしかいいようがない。
</p>
<p>
「プログラミングElixir」は、どちらかといえば<a href="http://pragprog.com/book/jaerlang2/programming-erlang">Programming Erlang(第2版)</a>(日本語版は<a href="http://shop.ohmsha.co.jp/shop/shopdetail.html?brandcode=000000001784">「プログラミングErlang」(第1版の翻訳)</a>)同様、リファレンスではなく、最初から最後まで読んで手を動かしていくことで、プログラミングシステムの基本が身についていくようになっている本である。中にErlangのコードはほとんど出てこない。やっぱりErlangはDave Thomasには嫌われているのかもしれない(笑)。でも、OTPという単語は出てくる。だからOTPは知らないとこの本はわからないかもしれない。ということは、Elixirのマニュアル同様、Erlang/OTPのマニュアルを読まないと結局はいけなくなるのだろうと思う。Elixirは多くのElixirで書かれたモジュールを持っているが、実際はErlang/OTPのモジュールにも多くの機能を依存しているからだ。そういう意味で、この本を読んで先に進むには、Erlang/OTPの本が必要かもしれない。幸い、オーム社からは<a href="https://heikou-konton.blogspot.jp/2014/06/LYSE-Japanese-edition.html">「すごいErlangゆかいに学ぼう!」(このblogで紹介した記事へのリンク)</a>という本が2014年に出ている。両方読んでみることを、ぜひお勧めしたい。
<p>
これを機に日本でも<a href="http://elixir-lang.org/">Elixir</a>と<a href="http://www.erlang.org/">Erlang</a>に触れる人達がますます増えることを願っている。
</p>Kenji Rikitakehttp://www.blogger.com/profile/00837128766291897538noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-5350841351180825870.post-60006316188978183152016-08-17T14:32:00.000+09:002016-08-17T14:32:30.263+09:00個人事業ブログとの統合のお知らせ<p>
個人事業ブログはTumblrで動かしていたのだが、米国Yahoo!の買収やセキュリティ攻撃などもあってTumblrの先行きが不安定なこと、そして個人としての自分は事業をやっている時とそうでない時と特に人格が変わっていないこと(変わったら大変だ…)など、諸々の理由により、個人事業のブログ(現在は<a href="http://blog.rikitake.jp/">blog.rikitake.jp</a>で書いている)をこちらに統合することにした。<tt>blog.rikitake.jp</tt>からのリダイレクト先を変えれば済む話なので、運用上はそれほど大きな問題にはならないだろう。
</p>
<p>
なお、移行の際は記事数が少ないため、投稿日時を可能な限り保存しつつ手で移行する予定である。そのため、古いURLは消えてしまうが、そんなに記事数が多くないため深刻な問題にはならないだろうと予想している。
このblogの文体は基本的に「である調」だが、それ以外は今までの個人事業ブログと内容を変えることはないであろう。まあいわば事業報告をこちらのblogでもやっていくことになる。
</p>Kenji Rikitakehttp://www.blogger.com/profile/00837128766291897538noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-5350841351180825870.post-10475569465182918662016-07-01T21:00:00.000+09:002016-08-19T09:13:32.026+09:00大阪大学基礎工学部電子物理科学科にて平成28年度の講義を担当致しました<p>大阪大学基礎工学部電子物理科学科エレクトロニクスコースの平成28年度科目「電気工学特別講義」にて、力武健次技術士事務所 所長 力武健次が、2016年6月14日、21日、28日の3回にわたり講義を担当致しました。</p>
<p>講義の内容はInternet of Things(IoT)をめぐる諸問題についての一般的な解説です。詳細については<a href="https://github.com/jj1bdx/oueees-201606-public/">こちらのGitHubレポジトリ</a>に公開しております。</p>
<p>なお、力武は平成21、22、27の各年度にも同講義を担当しており、今回は通算4年度目の登壇となります。</p>Kenji Rikitakehttp://www.blogger.com/profile/00837128766291897538noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-5350841351180825870.post-1031848007963504412016-03-17T17:00:00.000+09:002016-09-19T18:20:31.755+09:00SFOあるいはサンフランシスコ雑感(2016年3月)<a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEjoEHuVDf7Mei3l2gNr18-XK2mT5X7don8xOBLploJRhMt4R-ub-HltxwXXZdVrX_498_fVqyzSU1jcfGCLxecU4V4mZfTPZuAiECTcgS3F_wZ71S2ETRCQprU5Jj6eru1ANQKrSqbor68/s1600/leatherneck-20150402.jpg" imageanchor="1" ><img border="0" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEjoEHuVDf7Mei3l2gNr18-XK2mT5X7don8xOBLploJRhMt4R-ub-HltxwXXZdVrX_498_fVqyzSU1jcfGCLxecU4V4mZfTPZuAiECTcgS3F_wZ71S2ETRCQprU5Jj6eru1ANQKrSqbor68/s320/leatherneck-20150402.jpg" width="320" height="318" /></a>
<p>(写真は<a href="https://www.marineclub.com/">Marine's Memorial Club and Hotel</a>のマスコットのブルドッグの絵)</p>
<p>SFO雑感。昨年2015年に続いて、米国カリフォルニア州サンフランシスコの雑感です。年に1度しか来ないですが、定点観測になってるので話のネタにはなるかも。</p>
<p>SFO雑感(1)米国はメートル法じゃないので、温度と長さの換算は暗記しておくのが吉。先週のSFOは長雨、日中の気温は最高60度(摂氏15度)に行かず、55度(摂氏13度)ぐらいの日が多くて、寒かったです。風速は30マイル(= 48km/h = 13m/s )で、雨量が1日で1インチ(25.4mm)とか、まあ換算が大変でした。ただ、これに慣れていれば、The Weather Channelで必要な気象情報は得られるので便利です。</p>
<p>SFO雑感(2)どこでもgratuity(チップ)が必要。現場の人達の貴重な小遣いなので「気は心」で。20%が相場かな。部屋の掃除の人にはUSD2、食堂の人にはUSD2.50をあげてました。レストランだと15%〜20%ぐらいでしょうか。</p>
<p>SFO雑感(3)公衆電話見ません。もう全部スマホです。ガラケーも見ません。</p>
<p>SFO雑感(4)ダウンタウンでは午前2時でも平気で皆騒いでます、が、今年は雨のせいかあまり聞こえませんでしたねえ。夜間は1990年代からずっと怖いです。まあ、チャイナタウンからNob Hill方面に集団で歩く分には、それほどキツくはないですが。</p>
<p>SFO雑感(5)SIMはT-Mobile(US)のプリペイドのを買うとテザリングもできる料金プランがあるしトッピングもできるので便利です.長期の滞在なら、T-MobileのSimple Choice Prepaidプランに、International Callオプション(日本他への地上回線かけ放題)というのがお得です。Union SquareのT-Mobileに昨年行っていろいろやってもらったのを、ちょこちょことチャージしながら、今年も使いました。ただ、月USD65程度と高いので、使い終わったらPay As You Goのプランに切り替えないと死にます。この場合の維持費はUSD3/月。</p>
<p>SFO雑感(6)LTEの周波数は日本のスマホの大半では対応していないので使えるのは3G/HS(D)PAだと思っておくべきでしょう。どうしてもLTE使いたいなら、現地の端末を調達してしまうのも手かも。</p>
<p>SFO雑感(7)米国の硬貨は25セントが事実上最高額で、1ドル以上は全部お札です。数十枚単位で用意しておかないとチップが大変。あと必要なのはUSD10/USD20のお札。USD5のお札は大変便利です。まあもっともデビットカード相当のクレジットカードがあれば、それで済んでしまうので、あまり現金はいらないかも。</p>
<p>SFO雑感(8)ホテルで騒ぐ客は結構いますが、宴会で酔っ払って意識不明になったり絡むのは禁止行為です。即刻追い出されます。大目には見てくれません。Please drink responsibly! ということで、お酒はほどほどに。また、屋外での飲酒、路上での飲酒は違法です。</p>
<p>SFO雑感(9)基本的に路上および建物から一定の距離以内は禁煙です、が、屋外では結構皆吸ってます。</p>
<p>SFO雑感(10)全般的にバブルです、が、昨年ほどではなかったような、気がする。</p>
<p>SFO雑感(11)ウォシュレットはありません。お尻はよく洗いましょう。</p>
<p>SFO雑感(12)身体を洗うための設備はシャワーが主で、風呂桶はないか、あってもごく浅いものがほとんどです。今年はついにRestroom/bathroomの電灯が洗面台にしかない部屋だったので、なかなか夜は暗くておどろきました。昼は外光が入る設計でよかったんですけどね。</p>
<p>SFO雑感(13)英語母語話者以外は皆思い思いの英語もどきを話しています。だから通じなくても気にせず通じるまで続けるのが吉です。相手もそういうものだと思っています。別の言い方をすれば、何か言わないと相手にされません。英語ができないのを察してくれるなんていうことは絶対にあり得ません。ただ、皆人間なので、なんかしんどそうだな、ということはわかるようで、そういう状況で話を切り出すと相談には乗ってくれることもあります。</p>
<p>SFO雑感(14)公衆トイレは空港などを除いて原則ないものと思ってください。また飲食店のトイレは個室になっているので混雑時は待たされます。オークランド(Oakland, CA)のチャイナタウンの中華屋では、別室の共同トイレに案内され、そこは全部施錠してあって(香港等同様これは犯罪防止の観点から常識)、店の客も電子錠開錠用のカードを店から借りて行くようになってます。外部の人はUSD20を預けるか、身分証明書を預けるか、しないといけないとか書いてありました…。</p>
<p>SFO雑感(15)Market St.他大通り、そしてTaylor St.等のTenderloinと呼ばれるいわくつきの地区は人が行き倒れていたり、わけのわからないことを叫んでいる人がいますが、無視して歩くしかありません。小銭をせびる人もいました。ただ、ホームレスの人達の精神障害は無視できない問題になっていて、結構面倒なようです。なお、私はMarketの南側には近づかないようにしているのですが、どの地区が危険かという情報は仕入れておく必要があります。</p>
<p>SFO雑感(16)自分が車運転しないんで詳細はわかりませんが、市内の渋滞は年々ひどくなっています。帰国時に朝8時前後の101でSFOに戻ろうとしたら、SF中心部から40分ぐらいかかりました。Bayshoreに一度下りて戻るという、迂回路を使ってこれでしたから。</p>
<p>SFO雑感(17)日本食はあてにしてはいけません。全体に油が多く、味もきつめです。テイクアウトの中華とも東南アジア風ともつかない料理が意外に吉かも。ただ今回は自分の好みで外食する暇がほとんどありませんでした。スーパーで売っている巻き寿司が定番で、意外と良いです。あと日本のアルファ米ベースの非常食は重宝します。</p>
<p>SFO雑感(18)日本円が安くなったこともあり、物価は高いです。大体日本の倍です。ドラッグストアなどでもバッグは有料、店によってはクレカは手数料を取られます。自前バッグがより良いかも。もちろん詰めてくれます。</p>
<p>SFO雑感(19)ホテルで従業員や他の客、そしてもちろん知人と目が会ったら声をかけて挨拶しましょう。しないと怪しまれます。</p>
<p>SFO雑感(20)Financial District - Union Square - Nob Hill 方面は、坂は多いですが、昔の建物がたくさん残っているので魅力的かも。ただ、結構歩きます。</p>
<p>SFO雑感(21)当然ながら左ハンドル、右側通行です。シートベルトは法令で着用が義務付けられていて、付けないとブザーが鳴って走りません。</p>
<p>SFO雑感(22)大部分の交差点の歩行者用信号には「あと何秒」の表示が出るようになりました。守って渡りましょう。結構時間が短かいので要注意です。</p>
<p>SFO雑感(23)サンフランシスコのアジア系の中で日本人は本当の少数派になってしまいました。過去の在住経験から類推しないのが吉です。言い換えれば、アジア系同士でいがみあっていられるような状況ではありません。</p>
<p>SFO雑感(24)タクシーは市内では拾えますし、呼べば来ますが、飛ばすので、飛行機の乱気流なみには揺れます。Uberはまだ私は自分では使いませんでしたが、呼んでいただいた車に数人の団体で乗った限りは、概して問題なく快適でした。</p>
<p>SFO雑感(25)鉄道ですが、BARTはまあ普通に使えます。ちょっとチャージにコツが必要ですし、意外と高額ですが、日本のJRの都市部の郊外線みたいなものです。路線図は調べていったほうがいいでしょう。(<a href="https://www.bart.gov/">bart.gov</a>) MUNIのメトロやCalTrainはまだ使ったことがありません。駅のエスカレータは片側が空きます。</p>
<p>SFO雑感(26)公共交通網は決して高度ではありません。歩いて動くしかない場合がほとんどです。坂も多く、健脚であることが要求されます。車の運転できない人、そして歩行障害のある人はご注意を。</p>
<p>SFO雑感(27)Apple StoreはUnion Squareの近くにあるはずなんですが、今回は周辺が工事されていて、詳細を確認できませんでした。</p>
<p>SFO雑感(28)Union Squareの周囲にはMacy's、SAKS Fifth Avenue、Nieman Marcusなどの高級百貨店が揃っています。おみやげにどうぞ。あと、Embarcadero Centerの各種小売店もお勧めかも。今回は<a href="http://www.ambassadortoys.com/">Ambassador Toys</a>というおもちゃ屋さんに行きました。</p>
<p>SFO雑感(29)ただアメリカ人に「デパートで買い物する」というと怪訝な顔をされます。デパートのない都市が大半だからですが。</p>
<p>SFO雑感(30)サービス業の人達、基本的に愛想はいいんですが、手先が不器用です。そういうお国柄なので多くを期待しないのが吉。あと、余計な単語は極力使わないように会話しますから、基本的に形式立った文章にはなりません。</p>
<p>SFO雑感(31)SFOの空港周辺は3Gのカバレッジは昨年よりは充実してきましたが、一部GSMのEDGEになってしまうところもあります。ただ、SF市内での3G(HSPA+/HSDPA)には困りませんでした。</p>
<p>SFO雑感(32)ネットワークの回線は日本よりは遅く、混み合っています。RunkeeperのGPS機能も使ってみましたが、そこら中のビルでGPSの電波が反射してしまうため、かなり悲惨なことになりました。</p>
<p>(初出: Facebookの2016年3月17日の自分のタイムライン)</p>Kenji Rikitakehttp://www.blogger.com/profile/00837128766291897538noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-5350841351180825870.post-32004357605418777062016-03-12T21:00:00.000+09:002016-09-19T18:36:20.151+09:00Erlang Factory SF Bay 2016にて発表致しました<p>米国サンフランシスコにて開催された<a href="http://www.erlang-factory.com/sfbay2016/">Erlang Factory SF Bay 2016</a>にて,力武健次技術士事務所 所長 力武健次が<a href="http://www.erlang-factory.com/sfbay2016/kenji-rikitake">“Fault-Tolerant Sensor Nodes With Erlang/OTP And Arduino”</a>と題して英語にて発表致しました.スライドは<a href="https://speakerdeck.com/jj1bdx/otp-and-arduino">speakerdeck.com</a>にて公開しています.また、この発表で使用したソースコードやスライド原稿は<a href="https://github.com/jj1bdx/bearfort">GitHubのレポジトリ</a>にて公開しております。</p>
<p>なお、<a href="https://www.youtube.com/watch?v=VGkzzGprBYM">Erlang Factory SF Bay 2016 での発表の模様はYouTubeにて公開されております</a>.</p>Kenji Rikitakehttp://www.blogger.com/profile/00837128766291897538noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-5350841351180825870.post-89441367350861897782016-02-20T00:00:00.000+09:002016-08-17T15:19:29.419+09:00Software Design誌にて「Erlangで学ぶ並行プログラミング」を連載しました<a href="http://gihyo.jp/magazine/SD">技術評論社のSoftware Design誌</a>にて,力武健次技術士事務所 所長 力武 健次が,同誌2015年4月号より2016年3月号まで「Erlangで学ぶ並行プログラミング」と題して連載を行いました.ぜひご一読いただければ幸いです.</p>Kenji Rikitakehttp://www.blogger.com/profile/00837128766291897538noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-5350841351180825870.post-57343571323275684102016-02-18T20:45:00.003+09:002016-02-18T20:47:36.434+09:00大学で過ごした日々<p>1984年から東大で学部から修士まで6年間、2002年から阪大にて外部の研究協力者として、また社会人博士の学生として3年過ごし、2010年から京大では教授として3年弱勤務した。残念ながらそれらで得た結論は皆同じで、どこも組織としてはダメだった。もちろんその過程でいろいろな出会いはあったし、勉強もできたことを考えれば、全部無駄だったとは思っていないけれど。</p>
<p>最初に大学に行ったときは、コンピュータ屋は目指していなかった。大学の中では計算機屋の地位は低い。そして率直に言って日本の大学は計算機科学のレベルは高いとはいえない。東工大のTSUBAMEのような例外的成功例はあるが、基本的に米国の後追いを越えていないし、また越えられない理由が無数にある。もしコンピュータ屋を目指すのであったなら、学部の時点でUC BerkeleyやStanfordやMITを目指すべきだったと思っている。もっとも、お金もなかったし体力もなく健康でもなかったので叶わぬ夢だったが。</p>
<p>もっとも、そうはいっても、結局、自分は理論物理屋も地球物理屋もできず、さりとて成績も良くなかったのでそもそも理学部情報科学科への進学はかなわず、工学部応用物理関連学科群に進学することになった。本格的にコンピュータ屋に復帰したのは、修士の時に情報工学専攻で学ぶことになってからである。これが良かったのかどうかは、自分では判断できない。まあ、好きなことではなく、目をつぶってでもできることでなければ人間はロクに稼げないので、そういう意味では向いていたのかもしれない。</p>
<p>21世紀になっても相変らず旧7帝大が権勢を振るっているのが日本の実情だと個人的には思っている。国公立私立を問わず、文科省が生殺与奪を握っている以上、これは不可避かもしれない。国立大学も2006年に国立大学法人と名称を変えたとはいえ、どの大学も運営は官僚的そのものであり、計算機科学のような論文数も少なく何をやっているかわからない分野には理解は低い。</p>
<p>大学は基本的に外部との交流をものすごく嫌う。中の組織は皆それぞれの派閥を作りたがるので、常に相互監視疑心暗鬼の世界にある。このような状況はこの30年弱で変わるかと思ったが、大して変わっていない。かつて京都大学にて全学の情報セキュリティに関する仕事をしていたときには、多くの教員から敵意に満ちた批判を受けた。まあ職務上無理からぬこととはいえ、組織としての統制がまったく効いていない状態では、徒労感のみ残る仕事だったことは否めない。実際には、統制される側が自律しているとはお世辞にもいえない状況であり、日々起こる事案に対応しなければならず、現場は混乱の極みだった。</p>
<p>京都大学でもう一つ感じたのは、学生が自由を求めていろいろ騒ぐのはいいとして、本来それを受け止める側の教員までが同じように騒いでいる例が少なくないことだった。京都大学は対話を重視する大学をスローガンとしてかかげているが、実際には各人自分勝手な主張をしているだけで、何の対話にも教育にもなっていないように見えた。もちろん粛々と日常業務をこなし、一切動じていない先生方もたくさんおられたのもまた事実だが。自分もそのような日常業務をこなし、一切動じない教員になろうと努力はしたが、あまりにも不条理が多く、プロパーでないことによる立場の低さはいかんともしがたい状況であったため、結局健康を害してしまった。</p>
<p>そんなわけで、自分は大学に関しては、人生選択を誤ったなというのが率直なところである。計算機科学に限定するならば、北米のトップの大学へ行った方が遥かに実践的な勉強ができただろうし、現在なら他の選択肢はないに等しいだろう。</p>
<p>ただ、学術研究そのものに対する締め付けとコスト高騰の波は日本以上に北米は厳しい。コンピュータ屋の場合、大学を出てさらにテックベンチャーで滅私奉公して働くことを覚悟しない限り、自己破産でも免除されない学資ローンの借金で首が回らなくなることは想像に難くない。それが本当に正しい人生の選択なのか。そしてサンフランシスコの超高コスト社会で大きな出費を強いられるのが良いことなのか。
</p>
<br />
<p>何が正しいか、今の私にはわからない。それが率直な感想である。</p>
<p>(初出: Facebookの個人アカウントでのNotes 2015年9月26日)Kenji Rikitakehttp://www.blogger.com/profile/00837128766291897538noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-5350841351180825870.post-26007420080399337222016-02-08T17:10:00.000+09:002016-02-08T17:10:10.530+09:00CROSS2016に参加して<p>先週2015年2月5日金曜日に、横浜にてCROSS2016というソフト屋/Web屋さんのためのイベントがあったので、行ってきた。アンカンファレンスではACM Erlang Workshop 2016とErlang Factory SF Bay 2016の話もしてきた。</p>
<p>CROSS2016には<a href="http://2016.cross-party.com/sponsor">個人スポンサー</a>として参加した。これは自分のいた会社の元同僚が登壇者として出ていたこと、そして広告を出していただける珍しい機会だったことが理由だ。あと、登壇者の中にはずっと会いたかった人達がいたので、挨拶をしておきたかったというのも理由だった。(言い換えれば、そういう理由がない限り、自分が主たる登壇者にならないようなイベントに行くことは最近はまずなくなりつつある。)</p>
<p>各セッションの内容についての感想は以下の通り(<a href="http://2016.cross-party.com/program">プログラム</a>)。</p>
<ul>
<li>労使の本音バトル: これはノーチラステクノロジーズの神林さんが言っていることがいちいち腑に落ちていて、結局 <em>ship or die</em> あるいは <em>release or quit</em> でしかないという感想しかなかった。別に何をやっていてもいいのだが、納期が守れないとどうにもならない。もちろん私も納期をトばしてしまったことは25年前ぐらいには何度かあったので他所様のことはいえないが。仕事を楽しくできることはもちろん大事なことだが、一度仕事を受けたら完結させるしかないというのは楽しい云々以前の問題だろうと思う。</li>
<li>業務システムをRDBなしで作れるのか: このセッションは事前の資料なしには理解できない内容だったが、RDBなし、というのは、トランザクションを他のやり方で実現、あるいは担保するしかない、という基本に忠実な発表だったと思う。</li>
<li>先達に聞くこれからのエンジニア像(<a href="http://www.publickey1.jp/blog/16/_2016_cross_2016.html">この記事に概要がある</a>): 登壇者の御三方の論調は予想できていたし、まあ<strong>率直な話勉強会にすら行かせてもらえないような会社で仕事なんかしたくないだろうなあ</strong>とは私も強く思うのだけど(そういう制約がイヤで結局組織人としての人生を23年間で止めてしまったわけだし)、それが世間の常識と強弁できるほど世の中は甘くもないだろうなあという感想もあった。まあ日本には職業選択の自由と移動の自由が基本的人権としてあるはずなので、それを行使するもしないも個人次第だとは思う。伊勢さんの「死ぬわけじゃないんだからいいじゃん」というのには大いに笑った。怒られても殺されるようなことはない、というのはその通りだし。(もっとも、私は死にそうな目に遭ったこともあるので、死にそうになったら辞めるなり逃げるなり休むなりしたほうがいい、ということは強調しておく。)</li>
<li>日本でのグローバルなプロダクトやサービスの開発とは: モデレーターの小野さんは登壇者の4人を御すのが大変だったろうと思うが(4人ともとても優秀な人達なので)、見事にリードしておられましたね。まあ、世界中で使ってもらえないようなプロダクトをOSSで作ってもしょうがないので、公開するOSSは全部英語でドキュメント作るべき、とは思う。OSSでなくて、特定のお客さんから日本語で作れという要請があれば、日本語でやればいいけど。あと、会場で時差の話が出ていたが、それについては<a href="http://qiita.com/jj1bdx/items/e36fa34306a6f88a4eeb">このQiitaの記事</a>に言いたいことは一通り書いているので、ぜひ読んでいただければ嬉しい。</li>
<li>アンカンファレンスでは<a href="https://speakerdeck.com/jj1bdx/acm-erlang-workshop-2016-to-erlang-factory-sf-bay-2016-falsegoan-nei">このスライド</a>の通り話をしました。終了後声をかけていただけたのはありがたい限り。</li>
</ul>
<p>イベント全体はそれなりに良く運営されていたと思うのだけど、1つ苦言を呈するとすれば、会場の音響が<strong>メチャクチャで複数のセッションのPAスピーカーからの音が激しく干渉してロクに各セッションの音が聞こえない状態だった</strong>のは、とても残念だった。これだと何のためにイベントをやっているのかわからないので、音響の問題は次回はぜひ改善していただきたいと思う。あと、A会場/B会場では、照明の関係で話者の顔が見えないという指摘が知人からあった(その通りだと思う)。</p>
<p>ともあれ、今回は会うべき人達には皆ご挨拶できたし、それなりに楽しめたので、スポンサーシップを提供した意義はあったと思う。来年は<strong>ぜひ音響面だけは改善して</strong>より良いイベントになることを期待したい。</p>Kenji Rikitakehttp://www.blogger.com/profile/00837128766291897538noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-5350841351180825870.post-28947046431933282882015-12-30T09:23:00.001+09:002015-12-30T09:37:54.061+09:002015年を振り返って<p>気がつけばもう年末になろうとしている。</p>
<p>2015年は昨年から始めた情報セキュリティ関連の翻訳に加え、Webのフロントエンド技術、インターネットへのハードウェア接続技術 (Internet of Things)など、昨年からさらに幅を広げて活動している。詳細は守秘義務があるので控えるが、今後とも仕事として自分でできることは何でもやっていく覚悟で活動している。以下に対外活動の中で主なものを記す。</p>
<ul>
<li>1月よりErlang/OTPのrandomモジュールを後継する疑似乱数モジュールの開発が始まり、3月にはサンフランシスコのErlang Factoryにて、疑似乱数の高性能化に関する発表を行った。この成果は5月にErlang/OTPバージョン18から取り込まれることとなり、京都大学に勤務していた時から5年越しで続けてきた研究開発の成果を世に送り出すことができた。</li>
<li>技術評論社の雑誌Software DesignにErlang/OTPに関する連載を同誌2015年4月号から12回の予定で続けている。2015年8月号にはElixirの記事も執筆した。</li>
<li>4月に情報処理技術者試験の情報セキュリティスペシャリスト試験を受験。薄氷を踏む思いだったが、6月に無事合格通知をいただく。</li>
<li>昨年12月からのIngressでの活動は、5月上旬にSojournerメダルをもってA11を達成した時点で終了。ならびに関西地区(PA01-ALPHA-00)各地で普段歩かないところを歩いたのはよい人生の経験になった。ただスマホの画面を1台破損したり、自分自身が顔面から倒れて負傷したりと、どんなゲームにもリスクはつきものであることも痛感した。</li>
<li>6月には大阪大学基礎工学部にて5年ぶりに講義を行った。今回のテーマはsustainability、つまり情報環境の持続可能性に関して、さまざまな視点から問題を提起した。講義の内容は<a href="https://github.com/jj1bdx/oueees-201506-public">GitHubのレポジトリ</a>で公開している。</li>
<li>7月から8月にかけて、ARM Cortex-M3ベースのSTM32F103の学習を兼ね、新部裕さんの<a href="http://www.gniibe.org/memo/development/gnuk/rng/neug.html">NeuG</a>の製作実験と追試を行う。この結果STM32 Nucleo Dongle部でのNeuGの実装に成功。<a href="https://github.com/jj1bdx/freebsd-dev-trng">FreeBSD用の物理乱数注入ドライバ</a>と<a href="https://github.com/jj1bdx/osx-devrandom-feeder">OS X用の物理乱数取得ツール</a>も開発し、後述のavrhwrngにも応用できる物理乱数の運用環境を整えた。すでにNeuGやavrhwrngは運用レベルでの実験を行っている。</li>
<li>2013年から続いていた東京の実家の取り壊しと改築が8月末に終了。これに伴い9月より東京の拠点を開設。12月には大阪の家とIPsec VPNおよびIPv4/IPv6のグローバル/プライベート接続を行い、ネットワークの実験環境としても利用可能になった。今後はこれまで以上に東京での活動を増やしていくことになるだろう。</li>
<li>11月には情報処理学会第8回インターネットと運用技術シンポジウム(IOTS2015)にて、情報セキュリティを確保する上に不可欠である物理乱数を生成するArduinoのための廉価な(秋葉原の電気街で2千円以下で調達できる)ハードウェアavrhwrngに関する発表を行った。この成果は<a href="https://github.com/jj1bdx/avrhwrng/">GitHubのレポジトリ</a>にて公開している。この開発に伴い11月にはデジタルオシロスコープを導入した。</li>
<li>12月にはQiitaにて<a href="http://qiita.com/advent-calendar/2015/the-c-programming-language">C言語</a>と<a href="http://qiita.com/advent-calendar/2015/freebsd">FreeBSD</a>のアドベントカレンダーを開設し、自らも<a href="http://qiita.com/advent-calendar/2015/erlang">Erlang</a>や<a href="http://qiita.com/advent-calendar/2015/elixir-lang">Elixir</a>などのカレンダーを含め22件の日本語の記事を投稿した。</li>
<li>昨年12月から運用している<a href="http://www.flightradar24.com">FlightRadar24.com</a>の受信局は、NTT西日本やASAHI-NETの障害による事故はあったものの、順調に動いている。今年はさらに近隣の受信局と協力してMLATによる位置推定も行われている。KIX/ITM/UKBあるいは関西/伊丹/神戸各空港の混雑した大阪湾近郊の空域の状況通知には十分寄与できているようだ。</li>
</ul>
<p>一方、昨年同様、多くのものを捨てなければならなかったのもまた事実である。これもいくつか列挙していこう。</p>
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<li>アマチュア無線の活動のうち、従来の短波交信に関するものは、記録の整理を除いては新規には行っていない。今年は全く新規交信のない1年となることがほぼ確実である。</li>
<li>物理メディアからの脱却を図っている。CDとDVD以外の音楽メディアや過去の活動に関する書類は必要最低限に限り封印して保管することとし、技術系の紙の図書は大部分を売却した。今後も情報のmedia consolidationは続けていくことになるだろう。</li>
<li>自分の技術系情報の公開場所は<a href="https://github.com/jj1bdx/">GitHub</a>と日本語では<a href="http://qiita.com/jj1bdx/">Qiita</a>に集約しつつある。技術情報の配布については、このblogが使われることはもうなくなるだろう。記録としては残していくし、今後状況が変わったらまたこの場所を使うことは大いにあり得るが。</li>
<li>Twitterでの議論は昨今の社会状況を鑑みる限り(ごく専門的な技術的事項を除いて)事実上不可能になったと判断し、SNSの付き合いの大半はFacebookに移した。Facebookは知人あるいは業務上連絡を取る必要がある場合のみの運用としている。</li>
<li>生活は引き続き厳しい。事業開始2年目であり当然ともいえるが、引き続き業務に直接つながらない出費については緊縮財政に努めている。</li>
</ul>
<p>2016年のことはもう想像もつかない。昨日を終えて今日を生きていられることは必然ではなく奇跡なのだと思って、日々の生活と業務に精励するしかないだろうという覚悟で2016年も活動していく所存である。</p>Kenji Rikitakehttp://www.blogger.com/profile/00837128766291897538noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-5350841351180825870.post-1502193423020524632015-12-26T11:36:00.000+09:002016-08-17T15:53:26.330+09:00力武健次技術士事務所 2015年年末年始営業予定<a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEgkWepf3W1U2YXX5G9B1kooYb5UybKyCbGsEvUJuk0T3ycxH8g6frkdfJsX1VijUjGckyV6rzuUjeekKzkr9hJoAZPZivt1qFXYF43rQNeit6kfdXMuobXatUKc5Dr9RmQyLgJdfrNTxA0/s1600/tumblr_nzy1w6eJu31tdgp5xo1_1280.jpg" imageanchor="1" ><img border="0" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEgkWepf3W1U2YXX5G9B1kooYb5UybKyCbGsEvUJuk0T3ycxH8g6frkdfJsX1VijUjGckyV6rzuUjeekKzkr9hJoAZPZivt1qFXYF43rQNeit6kfdXMuobXatUKc5Dr9RmQyLgJdfrNTxA0/s400/tumblr_nzy1w6eJu31tdgp5xo1_1280.jpg" width="400" height="300" /></a>
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<p>力武健次技術士事務所は2015年12月26日〜2016年1月3日の間は休業と致します。(現在作業中の案件についてはこの休業期間中も可能な限り迅速に対応させていただきます。)どうぞ皆様もよい年末年始をお迎えください。</p>
Kenji Rikitakehttp://www.blogger.com/profile/00837128766291897538noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-5350841351180825870.post-3936606880349401362015-12-25T21:00:00.000+09:002016-08-17T15:35:48.502+09:00QiitaにてC言語とFreeBSDの2015年度アドベントカレンダーを開設しました<p>2015年12月1日〜25日の間、プログラミング知識共有サイトQiitaにて、力武健次技術士事務所 所長 力武 健次が、<a href="http://qiita.com/advent-calendar/2015/the-c-programming-language">C言語に関するアドベントカレンダー</a>と<a href="http://qiita.com/advent-calendar/2015/freebsd">FreeBSDに関するアドベントカレンダー</a>を開設しました。どちらのカレンダーも多くの参加者と投稿者に恵まれ、有意義な情報が集まって意義あるものになったかと思います。</p>
<p>なお、力武はこの他のアドベントカレンダーにも参加し、期間中22の記事をQiitaに投稿しました。</p>Kenji Rikitakehttp://www.blogger.com/profile/00837128766291897538noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-5350841351180825870.post-59206937545484346462015-12-18T21:00:00.000+09:002016-08-17T15:32:51.544+09:00Erlang/OTP 18.2.1にてFreeBSD用のHiPEのバグを修正したパッチが採用されました<p><a href="http://www.erlang.org/download/otp_src_18.2.1.readme">Erlang/OTPのバージョン18.2.1</a>にて、力武健次技術士事務所 所長 力武 健次が提案したFreeBSD用のHigh Performance Erlang (HiPE)対応のErlang仮想マシンBEAMがビルドできないというバグを修正したパッチが採用されました。</p>
<p><a href="https://github.com/erlang/otp/commit/e616e04d55b28bff5f0660eb8e3a32fffe398a13">このパッチはFreeBSDでErlang/OTPをビルドした際にsigaction()の取扱いで起こる問題を修正するものです(GitHubにて公開しています)</a>。</p>Kenji Rikitakehttp://www.blogger.com/profile/00837128766291897538noreply@blogger.com