2012年6月18日

gTLDの拡大による混沌がもたらすもの

ICANNが拡大の方針を打ち出して以来、非常に多くの名前が一般トップレベルドメイン(gTLD)として申請されている。 2012年6月13日に行われたこのICANNの発表したリストの中には、Tokyo, Kyoto, Osakaといった日本の地名もあれば、企業名をそのまま申請しているものもあったり、さまざまである。国際化ドメイン名(IDN)に基づいたアルファベット以外の文字列も多数存在する。

これらの新規gTLDが適切か不適切かについては論じない。特定の意味を持つ名前が企業等によって独占されることの弊害については各所で詳しく論じられているのでここでは述べない。

ただ、一つ気になるのは、これによってDNSのルートゾーンが従来よりもサイズが大きくなることで、ルートゾーンの運用自身の安定性に影響が出ないかということである。2012年6月現在、国や地域を代表するトップレベルドメイン(ccTLD)とgTLDを併せた数は300に満たない。しかし、申請されたgTLDが仮にすべて登録された場合、総数は大幅に増え、ルートゾーンの大きさも膨れ上がるだろうことは明白である。この問題についてICANNは2010年10月に報告を出しており、それによれば「年間最大1000個程度のTLDが増える分には大規模な障害は起こらない」としている。

もっとも、(私には疑問は払拭できないのだが)仮に技術的には問題なかったとしたところで、gTLDレジストラの間での調整を細かく行う必要が出てくることもまた事実であり、現実のDNS権威サーバの状況を的確に反映したルートゾーンの内容を維持することはより困難になるだろう。また、特定のTLDに対して管理権限を持つということは、そのTLDに関するWebのCookieやDNSSECでの認証階層など、本来の単純な名前→アドレスへの対応を行う機能の範囲を超えた、幅広い範囲の管理権限を持つことになるということも忘れてはならない。

そして、新しいgTLDが登録されると、従来よりもステークホルダーが大きく増える分、政治的にはかなり混沌とした状況になるだろうと予測できる。その場合、ICANNはどのような意味を持つのだろうか。そして、従来からDNSで仮定されている相互接続性や到達性は保証され続けるのだろうか。

IPv4上のサービスがIPv6上のサービスに継承され始めている現在、そろそろDNSの仕組みも抜本的に考え直すべき時が来ているのかもしれない。