(新卒準備カレンダー2011春
http://atnd.org/events/13324
向けのエントリーです.)
仕事を始める上で,あきらめずに最後までやり抜く,というのは仕事を成功させるための必須条件の1つだ.しかし,それと同じ以上に大事なのが,仕事を続けられそうにないときに,そのことをできるだけ早く判断して,しかるべき助けを求められるか,ということである.
情報通信の世界では,「良いニュースは早く伝わるが,悪いニュースはなかなか伝わらない」という経験則がある.これは技術的にも心理的にもいえる.たとえば,通信が途絶したり機器が故障したと判断するためには,通信相手から一定の時間応答がないことを確認する必要がある.この時間の分だけ判断はどうしても遅れてしまう.故障した,と明示的に連絡してくれるような仕組みがあれば話は別だが.(例えばErlangでは,process linkをプロセス間であらかじめ張っておくことで,リンク先のプロセスが異常終了した場合は,そのことがすぐにわかるようになっている.)
人間関係でも同じことがいえる.多くの人は仕事が完了したら,早くその仕事から解放されたいから報告するだろう.しかし,なかなか仕事が終わらなくて納期や締切に間に合わない時は,どうしても希望的観測を持ってしまうし,仕事が終わらないというのはカッコ悪いと考えたり,あるいは「相手に怒られたらどうしよう」と思い,すくみ上がってしまい何もできなくなるものである.人間は恐怖心に支配されがちな生き物だからだ.でも,そんな時こそ勇気を出して納期や締切までには終わらないことをできるだけ仕事の相手に報告し,次の一手を打つことが必要だ.
仕事の上で協力者に助けを求めることは恥ずかしいことではない.むしろ,できるだけ細かく頻繁に状況報告をしておくことで,予見できる問題を早く解決できる.平たくいえば,ダメそうな時には,できるだけ早めにそのことをはっきりと知らせたほうがいい.
大変恥ずかしいことだが,私も新卒で入社してすぐ課題を与えられたのに,その課題については完全にすくみ上がった状態になってしまい,結局なにもできずに,依頼者に大変迷惑をかけたことがある.これは仕事を頼んでいる方にとっては,およそ信用できない,という風に見えてしまう最悪の行動である.
人間,いつも元気でいられるわけではない.気の進まないときもあるだろうし,仕事よりも高い優先度でこなさなければならない作業が発生するかもしれない.それは心ある人なら誰でも理解してくれることだと思う.しかし,仕事を抱えたまま,あるいは手放さないまま,どこかへ雲隠れしてしまうのは,その後始末をしなければならない関係者にとっては最悪の事態である.
優れた人は,悪いニュースでも勇気をもって早く知らせることのできる人のことである.
優れたプログラマは,異常が発生した場合可能な限り迅速にその判断をするコードを書いて実行させることができる.
そして,優れたインフラエンジニアは,自分だけで手の負えない障害が発生した場合,すぐに援軍を求めることができる.
1つ付け加えることがあるとしたら,迅速な判断をする能力は,健康を保ち,体力と精神力を維持し,そして日頃から訓練して鍛えることによってしか培われない.そういう意味では,失敗を経験した人の方が,そうでない人よりも判断能力は高いと思う.